クローズアップ・現代の屋根職人【第2回】次代を担う強者・浅井 伸次
「職人」とは、自ら身につけた熟練の技術によって、手作業で物を作りだすことを職業とする人の事である。
そして、彼らの持つ技術は「職人芸」とも呼ばれている。
第2回目の今回は、次代を担う強者・浅井さんにスポットをあて、屋根職人を目指したきっかけや様々な話しを聞いてみましたので、皆様にご紹介したいと思います。
☑いろいろなタイミングが重なって...
林(以下H):そもそも屋根職人になろうと思ったのは何歳?
浅井さん(以下A):28歳の時だね。
H:屋根職人の前はどんな仕事してたの?
A:元々機械いじりが好きで技術的な仕事がしたいと思っていたから、高校卒業して某自動車販売会社のメカニックをやってたんだよねぇ。
H:浅井さん手先器用だからねぇ(笑)でも、なんでメカニックから屋根職人になろうって思ったの?お父さんの影響はあったの?
---実は浅井さんのお父様は現役の屋根職人さんで、弟さんと一緒にかつては石川商店にも所属され、今でも屋根業界の第一線でご活躍されておられます---
A:いや、それはないなぁ...。メカニックをずっとやってきて、26歳で工場長になったんだけど、工場長になると事務仕事とかが多くて現場で仕事することが減ったんだよねぇ。でもオレは現場の最前線で仕事がしたかったから、当時は結構悩んでたよ、「このままでいいのか」って。
H:なに悩んでたの?
A:工場長より更に上の立場ってなると、その自動車販売会社ではサービスフロント(お客様窓口)か営業しか残された道がないんだよ。だからもう先が見えちゃって...。さっきも話したけど、オレは現場で仕事したいって思ってたから...。
それにちょうどその時期に結婚することも決まってて、結婚したあとのことを考えると、自動車販売会社は平日休みだったから、奥さんと休みが合わなくなっちゃう。そうなるとすれ違いも出てくるかもしれないし、子供ができたときも遊びに連れて行ってやることも難しいと思って...。やっぱり家族のことを考えると日曜日が休みのほうがいいと思ってたし。まぁ、いろいろなタイミングが重なったんだよ。
あと、せっかく新しいことにチャレンジするなら、やればやった分だけ稼げる仕事がしたいって思ってたんだよね。そういう意味では職人というのは自分がやればやるほど稼げるし、自分の力量っていうか...技量が発揮できる最高の舞台だと思って。
☑最初は父親と伯父さんと3人で...
H:そういえば浅井さん、最初はお父さんと伯父さんと3人で仕事してたよね?元々実家が屋根工事店だったんだけど、手伝いとかしたことあるの?
A:あるよ!
H:やっぱり手伝ってたんだ。何歳くらいの頃?
A:小学生のころかなぁ...多分2~3年生くらいだったと思う(笑)
H:おいおいっ!小学生でなにを手伝ってたの?
A:(笑)コロニアルが梱包されてた段ボールあるでしょ?あれを親父が上から落としてたから、それを片付けたりしてた。
H:...。
A:いやいや、その当時はさぁ、今みたいにヘルメット完全着帽とかそんな時代じゃなかったしね(笑) その時は楽しかったよ。
あとさぁ、現場で食べる弁当が好きだったんだよね!遠足みたいな感じするでしょ?青空の下で弁当食べるって美味しいよねぇ(笑)
H:ちなみにお父さんたちと一緒に仕事したのってどれくらい?
A:2年くらいかなぁ。
H:そのあと他の瓦屋さんで仕事してたでしょ?あれって、やっぱり「修行に行って来い」的な意味合いだったの?
A:そんなんじゃなくて「忙しいから手伝ってほしい」って言われて、手伝いに行ってて...気づいたときにはそのままそこの瓦屋さんで仕事してた(笑)
H:騙された...って感じかな(笑) じゃあ今まで身につけた技術はそこで教わったってことだ多いってことだよね?
A:(しばらく考えてから)そう...だね...。
コロニアルはずっと親父のとこでやってたけど、瓦の仕事や板金の仕事、あと雨樋の仕事はほとんどそこで教わったなぁ。
H:いま振り返ってみてどう?
A:仕事覚えるまでは本当に大変だったけど、それ以上に充実感があった。あのままメカニックやってたら、こんな充実感を味わうことはできなかったね。
H:印象に残ってる現場ってある?
A:ほとんど戸建住宅の仕事だったから、特別印象に残ってる現場はないよ。近くを通ったとき「ここやったな」って思うくらいだよ。小山さんみたいに歴史的な建造物とか社寺・仏閣の屋根工事は経験はないからねぇ、でもいつかはやってみたいなぁ!
☑1級かわらぶき技能士
---今年の2月に開催された「1級かわらぶき技能士」という国家資格に見事合格された浅井さん、そのときの感想を聞いてみました---
H:ところで浅井さん、今年2月に受験した「1級かわらぶき技能士」試験、合格おめでとうございます。
A:あっ、ありがとうございます。
H:合格した感想を聞かせてよ。
A:いやぁ、オレみたいなのが合格しちゃって、なんか申し訳ないような気が...。
H:なんで?
A:だって、オレなんかまだキャリアとして10年くらいでしょ?そんなオレが1級かわらぶき技能士だなんて、おこがましいような気が...。
H:そんなことないでしょ!あれだけ器用になんでもこなせるんだから、もっと自信持ってもいいと思うけど...。
A:いやいや、試験と実際の現場は別物だからね。でも今のオレの技量じゃまだまだダメだよ!もっともっといろんな経験を積んで、自分の腕にもっと磨きをかけないと!
H:目指すところは?
A:誰かを目標にするんじゃなくて、自分が目標とされるような大きな職人を目指したいよね!
第1回で紹介した小山さんが見習いから修行をして独立したのが27歳のとき、職人の世界は10代~20代前半でキャリアをスタートさせる人が多いと思われる中で、どちらかというと遅咲きのデビューとなる浅井さん、しかし、この短い期間で様々な技術を習得できたことは、彼の生まれ持った才能と誰よりも惜しみない努力を積み重ねた結果である。
小山さんと共に若手に技術指導をする浅井さん、すでに親方の風格が漂っている。
模擬屋根を前に小山さんと話し込む1コマ、現場以外でも知識を様々な吸収する姿勢が彼を更に大きな職人さんへと導いていく。
仕事を離れると子煩悩な父親に...かつて自身が経験したように、彼もまた親子で仕事をする日がくるかもしれない...。
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浅井 伸次 プロフィール (1975年生まれ)
1994年 都内の大手自動車販売会社に整備士として入社。
1999年 2級ガソリン自動車整備士資格取得
2002年 工場長に昇格
2005年 大手自動車販売会社を退職、屋根職人としての道を歩みだす。
2007年 川崎市内の瓦工事店に所属
2011年 「浅井屋根店」として独立する。
2015年 1級かわらぶき技能士資格を取得
【保有資格】
2級ガソリン自動車整備士
自動車検査員
1級かわらぶき技能士
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